改正消費者契約法における賠償責任の免除の無効について

日本の経済は消費者が物を購入したり、サービスを利用したりすることで成り立っているといっても過言ではありません。従って、日々大量に発生する消費者取引に対し、正確且つ迅速に処理しなければならないため、取引における契約内容は事業者の約款等で定められており、消費者が個別に交渉する形態はとられていません。

 

そのような状況の中、消費者が不利益を被ることの無いように守るためにあるのが「消費者契約法」です。

 

消費者契約法とは?

消費者契約法は消費者が事業者から物やサービスを購入する際に、消費者の利益を不当に害されることを防止するために、平成13年から施行された比較的新しい法律です。

 

本来、私人が契約を締結する場合、契約内容については当事者の合意によって自由に定められるのが原則です。しかし、事業者と消費者では持っている情報や知識に差があるのが当然であり、そのような環境で「契約は当事者の自由」を貫くと、弱者である消費者が不当な扱いを受けることが目に見えています。

 

そこで、消費者の保護を目的として、事業者と対等な立場で取引のできるようにしたのが消費者契約法です。

 

賠償責任の放棄とは?

契約の約款等は事業者が定めるために事業者に有利なものになりがちです。

 

そのため、本来ならば事業者が損害賠償を負わなければならないような場合でも、損害賠償の免除の条項が定められていることが少なくありません。

 

さらに、契約条項には消費者の権利を制限する記載もあり、消費者が損害を受けた場合の損害賠償請求権を排除または制限し、消費者に不当な負担を強いています。

 

しかも、約款は難しい文言で記載されているため、消費者は内容を十分に認識しないまま契約しているのが一般的です。

 

例えば、以下のような条項が該当します。

  • いかなる理由があっても、一切損害賠償の責任を負わない。
  • 事業者に故意または重過失があっても、責任は問われない。

 

また、以下のような損害賠償責任の一部を免除する条項もあります。

  • 1名に付き、5万円を限度とする。
  • 損害に関しては10万円を限度として賠償する。

 

契約の解除

民法においては、事業者に債務不履行がある場合や、事業者の提供物の瑕疵によって契約の目的を達することができない場合、消費者は契約を解除することができます。

 

民法第541条

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

 

ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

 

民法第566条

売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。

 

ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

 

さらに、事業者が作成した契約条項の中には、債務不履行や瑕疵担保責任に基づく消費者の解除権を放棄させる条項の盛られていることがよくあります。例えば、以下のような条項が挙げられます。

  • 契約後のキャンセル、返品、返金、交換は一切できません。
  • 代金払込後の解約は受け付けられません。

このような条項が有効だとすると、消費者は事業者に債務不履行がある場合や、事業者が提供したサービスや商品に瑕疵があり、目的を達することができない場合であっても、契約のために残金の支払いを強要されたり、払込金が返還されなかったりする不当な状況を強いられます。

 

実は、改正前の消費者契約法でも賠償責任の免除や解除権の制限を無効とする条文はありましたが、何を無効とするかの具体的な明記がなされていませんでした。

 

消費者契約法の改正内容とは?

改正消費者契約法では、事業者と消費者の契約において、事業者の「損害賠償に対する責任免除」や、事業者の債務不履行及び目的物の瑕疵に対する「消費者の解除権の放棄」を定めた条項を無効としました。

 

消費者契約法第8条:次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。

一.事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項
二.事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項

 

消費者契約法第8条の2:次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。

一. 事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる条項
二.消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があること(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があること)により生じた消費者の解除権を放棄させる条項

 

近年、ネットでの消費者取引が急増していますが、ネット取引においても契約内容は事業者の約款などに記載されており、ホームページから確認できます。

 

ネット取引においても当然、事業者の賠償責任の免除は認められませんし、債務不履行に対する消費者の解除権を放棄させることもできません。

 

民法は全ての法律の根幹にあります。例えばカードローン限度額についての取り決めは貸金業法です。貸金業法は特別法なので、貸金業者は貸金業法を遵守しなければならないのですが、民法も当然に守らなければなりません。

 

それと同じで改正消費者契約法の根底には民法があるのです。